メキシコ麻薬カルテルドラマ「そして私たちは(Somos.)」を解説!Allendeで起きた大量虐殺は実話だった。

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先日現地メキシコ人に勧められて観た「Somos.」というシリーズ。2021年6月30日に公開されています。

いつもの麻薬系作品とは違った視点で描かれており、ストーリー展開も独特で飽きずに最後まで観れました。

メインキャラクターの一人であるBenjamínを演じるJero Medinaが個人的には結構好きなのですが、今回は少し残念な役でした。Jeroは「ナルコスメキシコ編」にも出ていますよ!

Somos. | Tráiler oficial | Netflix

被害者目線で描かれた麻薬カルテル作品

麻薬カルテルの作品というと、ナルコスやエル・チャポ等にもみられるように、麻薬カルテル側の視点、またはDEA(アメリカ麻薬取締局)の視点から描かれることがほとんどですが、「Somos.」では複数の被害者側(一般人側)の視点から描かれている点が、いつもと違って面白い。

メキシコ人が制作側に加わることで、地元の人々の感情や世界観をリアルに表現しています。(Monika Revilla と Fernanda Melchor)

メインキャラクターも一人ではなく複数の一般人が登場するので、序盤は混乱しますが、最終的にはみんな繋がっていることに気づきます。ついつい感情移入してしまいます。

また、「Somos.」が収録されたのはコロナ渦の真っただ中。メキシコでは多くの死者が出ており、困難を極めたと言います。

実際に起こったメキシコ片田舎での大虐殺事件

2011年3月18日、コアウイラ州アジェンデという小さな町で、麻薬カルテルによる大虐殺が起こりました。

Allende, Coahuila

地図を見ると分かる通り、アジェンデはアメリカとの国境に位置しており、麻薬の輸送にはもってこいな場所。テキサス州サンアントニオまで3時間くらいで行ける距離です。

作中に出てきた刑務所「Pidras Negras」はまさに国境に位置しており、多くの違法移民を取り締まっているよう。

さらに、アメリカから強制送還されたラテンアメリカの人たちがたくさん住んでいる場所でもあります。ドラマの中では、風俗嬢のFlor MaríaやNayeliたちがそのような境遇にありました。

この事件を起こした組織はLos Zetas (ロス・セタス)と呼ばれ、現在メキシコ国内で最も恐れられている麻薬カルテルの一つです。※正確には、カルテルZ-40 el Z-42

近年麻薬カルテルによる凶悪な犯罪は少しずつ減ってきている中、この事件は世間に知られることなく発生し、事件から3年後にジャーナリストのGinger Thompsonが公にしたことで、初めて知れ渡るようになりました。

「Somos.」は、生存者たちの証言を元に、犠牲者たちのストーリーを忠実に再現しながら作り上げられたフィクションです。

アメリカが引き金を引いたメキシコの大虐殺

彼はこの事件を、「アメリカが引き金を引いたメキシコの大虐殺」という記事にまとめています。

映画を最後まで見ると分かるのですが、この事件は麻薬カルテルが理由もなく一般市民を虐殺したというわけではありませんでした。

DEA(アメリカ麻薬取締局)Los Zetas (ロス・セタス)のメンバーの一人を逮捕したことにより、彼と彼の家族を脅迫し、組織の情報を聞き出すことに成功します。

そこで、脅迫を受けたメンバーであるHéctorとÓscarを解放する代わりに、DEAのオペレーションに協力させる計画を立てます。よくあるパターンですね。

この時、本案件を担当していたDEAのエージェントであるCarlosは、犠牲を最小限にとどめるため、極秘でオペレーションをしていました。

しかし、DEAの上層部であるCarlosの上司は、別の考えを持っていました。彼は田舎のメキシコ一般人の命を、価値のないゴミのように考えていたのです。

この案件は極秘にしなければ、一般人の命が狙われるというのは誰の目にも明らかでしたが、それを承知で通報をします。

それにより、内部告発者とされる人物、その家族、そして彼らと少しでもつながりを持っていた人への復讐が始まります。彼らの存在を知っている人は一人残さず殺害して、燃やしてしまいました。

当局は死者または行方不明者を28人と発表。記事を書いたThompsonはその後60人を特定しましたが、地元の団体によると犠牲者は300人以上に及ぶといいます。

アメリカにとって、メキシコ人の命はそれほど価値のないものか

同様にアメリカのDEAによる一つの判断により、メキシコの一般人が大量に殺されるといった事件は、今回が初めてではありません。

DEAのオペレーションを最前線で実行するのは、メキシコ人の言葉や気持ちも少しは理解している、メキシコ系アメリカ人が多いように感じますが、上層部はそうではありません。メキシコとは無関係の白人アメリカ人がほとんどです。DEAとカルテルが手を組むのを避けるには、仕方ないのかもしれませんが・・・。

「Somos.」の中でも、DEAがアジェンデという小さな町にカルテルZ-40 と el Z-42が進出したことに気づいた時、上層部の男性が放った一言がとても印象に残っています。

「アジェンデには何があるんだ?何もないじゃないか。」

この一言がすべてを語っていると思うんです。

多くのアメリカ人にとっては、メキシコ人なんてどこにでも湧いてきて、違法移民として毎日大量にアメリカに流れてくる上、アメリカ人の雇用を脅かしている、ゴキブリや蚊のような存在かもしれません。

しかし、彼らにだって複雑な事情があり、家族や友人がいて、多くの人は生き延びるために命がけで国境を越えてくるのです。

麻薬組織のメンバーだって、それぞれ事情があります。

登場人物のPaquitoのように無理やり殺人をさせられる人もいれば、Doña Chayoのように家族を守るために麻薬組織の活動に加担してしまう人もいますし、貧困により犯罪に加担せざるを得ない人もたくさんいるのです。

そして、その原因を作っているのは誰でしょうか?メキシコの麻薬カルテルが100%悪いのでしょうか。

そうではありません。

今回の「Somos.」、命の大切さを考えさせられるテーマでした。

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